プロ野球のキャッチャーとして活動し、監督としても日本一に3回輝き、2020年2月11日に84歳で亡くなった野村克也さんをしのぶ会が、12月11日に神宮球場で行われました。在籍した6球団(ソフトバンク、ロッテ、西武、ヤクルト、阪神、楽天)が共同発起人となり開催され、数多くの野球関係者やファンが弔問に訪れました。
現役選手時代の元同僚に加えて、監督時代の門下生らが多く集まり、会の後、各報道のインタビューで「野村野球」を語っていたのが印象的でした。
つまり、野球というスポーツを通して、人生で大切な様々なことを教えてくれ、学んだという感謝の思いを抱いている元選手が多く育っていたことの証でしょう。
名言も数多く伝えられています。
(1)「1年目には種をまき、2年には水をやり、3年目には花を咲かせる」。「石の上にも3年」という格言がありますが、人や組織を育てるのには、最低3年はかかることを教えています。
(2)「『失敗』と書いて『せいちょう』と読む」。誰もが必ず失敗はします。そして 失敗した時に、「どうして失敗したのか」「何がいけなかったのか」と反省し、「どうすれば上手くいくのか」を真剣に考えることができれば、その選手は成長することを伝えています。
スポーツは、成功、勝利、栄光を求めてひたすら訓練、努力します。しかし、実際には失敗、敗北、挫折を経験する結果に終わることはしばしばあるものです。その時の対応が成長に結びつくか、停滞、諦め、離脱に至るのか、「人生の縮図」であるスポーツへの関わり方が問われるのでしょう。
(3)「教育こそ監督に求められる第一の使命」。スポーツの監督・指導者・コーチに求められるのは、それぞれの競技の技術指導のみではなく、その人を育成しようという真摯な 態度と熱意を持った教育者という姿でしょう。思うような「できばえや、結果が得られないと、部員や選手たちに暴言を吐いたり、体罰を課したり暴力をふるうのは、「指導者」としては失格であり、そして、教育者の姿とはかけ離れています。そうされた部員たちは、スポーツから学べたはすの多くのことを学ぶ機会と経験が失われ、ゆがんだスポーツ観が植え付けられ、いつかそれを再生産していくという悪循環・負の連鎖を引き起こしてしまうのです。
「名将」と呼ばれるスポーツの指導者に共通したのは、「きびしくもやさしい」ことでしょう。「きびしいやさしさ やさしいきびしさ」が良い人材を育成できるスポーツの名伯楽の大切な姿勢と思います。
執筆:武藤芳照